工務店では、特定の社員に業務知識やノウハウが集中する「属人化」が起きやすいといわれています。属人化を放置すると、担当者の不在時に業務が滞るなど経営上のリスクにつながりかねません。本記事では、工務店で属人化が起きやすい原因やデメリットを整理し、解消に向けた具体的な方法を解説します。
工務店や建設業では、業界特有の事情から属人化が進みやすい傾向があります。ここでは代表的な3つの原因を紹介します。
建設業界では深刻な人手不足が続いています。国土交通省のデータによると、建設業就業者のうち55歳以上が約36.7%を占める一方、29歳以下は約11.7%にとどまっています。工務店においても少ない人員で現場を回す必要があり、特定の社員に見積もりや施工管理などの業務が集中しがちです。こうした状態が長く続くことで、担当者だけが業務の詳細を把握する属人化がさらに深刻化していきます。
参照元URL:国土交通省|最近の建設産業行政について(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001566406.pdf)
中小規模の工務店では、業務の進捗管理や顧客対応が口頭やメモ、個人のノートなどで行われているケースも少なくありません。日常的にデータを一元管理する体制がないことが、属人化を助長する大きな要因です。
工務店の業務は、設計・施工管理・見積もり・資材発注など多岐にわたり、それぞれに専門知識が求められます。現場ごとに条件が異なり、経験則で対応する場面も多いため、マニュアル化が難しい傾向にあります。「この人に聞かないとわからない」という状態が、工務店における属人化を定着させてしまう原因です。
属人化を放置すると、工務店の経営にさまざまなリスクが生じます。ここでは主なデメリットを4つの観点から見ていきます。
属人化が進んでいると、担当者が体調不良や急な休暇で不在になった際に業務が止まってしまう可能性があります。顧客からの問い合わせ対応や現場の進行管理が滞れば、工期の遅延やクレームにつながることも考えられます。
せっかくの受注のチャンスを逃すことにもなりかねません。
業務に関する知識やノウハウが特定の社員だけに偏っていると、退職や異動の際にナレッジが失われてしまいます。後任者は一から業務を覚える必要があり、教育コストの増大や業務品質のばらつきが発生しやすくなります。
特定の担当者しか業務内容を把握していない環境では、第三者によるチェックが行き届きにくくなります。見積もりの計算ミスや発注ミスが見過ごされるだけでなく、不正が発生しても発覚しにくい状態を招くおそれがあります。
属人化した業務は周囲から業務量や成果が見えにくく、正当な評価を行うことが難しくなります。評価の不透明さは社員のモチベーション低下を招き、結果として離職率の上昇にもつながりかねません。
属人化の解消には段階的な取り組みが重要です。ここでは工務店が実践しやすい2つのアプローチを紹介します。
属人化を解消する第一歩は、どの業務が誰に集中しているかを洗い出すことです。
業務フローを可視化したうえで、手順やポイントをマニュアルにまとめましょう。最初から完璧なマニュアルを目指す必要はありません。まずは主要な業務から着手し、実際の運用を通じて改善を繰り返すことが大切です。
業務の見える化と並行して、ITツールを導入することで属人化の解消をさらに推進できます。たとえば顧客管理システム(CRM)や工程管理ツールを活用すれば、情報を社内全体で共有でき、担当者が不在でもスムーズに対応しやすくなります。
工務店の業務効率化においては、見積もりシステムの導入も効果的です。見積もり作成は経験やカンに頼りやすく、属人化が進みやすい業務の代表例といえます。システムを活用すれば、過去の実績データやテンプレートをもとに、担当者によるばらつきを抑えられます。
ITツールの導入にあたっては、いきなり多機能なシステムを入れるのではなく、まずは小さく始めることがポイントです。チャットツールでの社内連絡やクラウドでのファイル共有など、導入しやすい仕組みから段階的に進めると定着しやすくなります。
工務店の属人化は、人手不足・情報共有の仕組み不足・業務の専門性の高さなどが重なって発生しやすい課題です。解消に向けては、まず業務の見える化とマニュアル整備から着手し、ITツールや見積もりシステムの導入へと段階的にステップアップしていくことが効果的です。
脱属人化は一度で完了するものではなく、継続的な改善が求められます。まずは自社の業務を棚卸しし、属人化している業務がどこにあるかを把握するところから始めてみてはいかがでしょうか。
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